MTXで効果不十分な関節リウマチ患者における国際共同第Ⅲ相試験(FINCH1試験)1)
  1. 社内資料:FINCH 1[GS-US-417-0301]〔承認時評価資料〕
    利益相反:本研究はGilead Sciences Inc.の支援を受けた。

目的
メトトレキサート(MTX)で効果不十分な中等度から重度の活動性関節リウマチ(RA)患者を対象に、MTX併用下におけるジセレカ52週間投与の有効性と安全性を検討する。
対象
MTXで効果不十分な中等度から重度の活動性RA患者1,755例(うち日本人147例)。
主な選択基準
  • ACR/EULARの2010年RA分類基準でRAと診断され、ACR機能分類Ⅰ~Ⅲに該当する18歳以上(日本人は20歳以上)の男性又は妊娠中ではない女性
  • スクリーニング時及びベースライン時に、腫脹関節数(66関節)(SJC66)が6以上及び疼痛関節数(68関節)(TJC68)が6以上
  • スクリーニング時に①~③のパラメータ(中央判定に基づく)の1つ以上に該当[①手、手首又は足のX線画像での1つ以上の関節びらんの確認、かつリウマトイド因子(RF)又は抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体が陽性、②RF及び抗CCP抗体が陰性の場合は、手、手首又は足のX線画像での3つ以上の関節びらんの確認、③高感度血清C反応性蛋白(hs-CRP)が6mg/L以上]
  • 投与前の少なくとも12週間は経口MTXの使用を継続しており、投与前の少なくとも4週間は7.5~25mg/週の用量が一定して投与されている
主な除外基準
  • 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)で効果不十分[ただし、1剤のbDMARDによる前治療歴(3ヵ月未満)を有する患者は登録可能]
試験デザイン
国際共同第III相検証試験。多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ及び実薬対照、並行群間比較試験。
地域、bDMARDによる治療歴、スクリーニング時のRF及び抗CCP抗体検出の有無による層別無作為化を実施した。
方法
対象をジセレカ200mg群、100mg群、アダリムマブ群又はプラセボ群に3:3:2:3の比率で無作為に割り付け、52週間投与した(ジセレカは各用量を1日1回経口投与、アダリムマブは40mgを2週間隔で皮下注射)。いずれの投与群も安定用量のMTXを週1回併用投与した
投与14週時にSJC及びTJCがベースライン時と比較していずれも20%以上改善しなかった患者は治験薬の投与を中止し、RAの標準治療を 受けることとした。プラセボ群は投与24週時に、ジセレカ200mg群又は100mg群に1:1の比率で再無作為化し、投与52週時まで試験を継続した。

※メトトレキサートの国内で承認された関節リウマチに対する用法及び用量

通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減するが、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにする。

<有効性評価項⽬>
主要評価項目(検証的評価項⽬)
  • 投与12週時のACR20改善率(ジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とプラセボ群との比較)
  • 投与24週時のmTSSのベースラインからの変化量(ジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とプラセボ群との比較)
副次評価項目
以下の項目を、ジセレカ200mg群、ジセレカ100mg群、アダリムマブ群、プラセボ群で検討した。
  • 投与1日目から52週時までのACR20改善率の推移(評価時点:投与1日目、投与2、4、8、14、16、20、24、26、30、36、44、52週時)
  • 投与1日目から52週時までのACR50、ACR70改善率の推移(評価時点:投与1日目、投与2、4、8、12、14、16、20、24、26、30、36、44、52週時)
  • 投与52週時のmTSSのベースラインからの変化量
  • 投与24、52週時のX線所見で進行がみられない(mTSSのベースラインからの変化量≦0)患者の割合
  • 投与12、24週時のDAS28(CRP)≦3.2達成率(12週時はジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とプラセボ群との比較)
  • 投与12、24週時のDAS28(CRP)≦3.2達成率(12週時はジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とアダリムマブ群との非劣性の検討)
  • 投与24、52週時のDAS28(CRP)<2.6達成率(24週時はジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とプラセボ群との比較)
  • 投与12週時のHAQ-DIスコアのベースラインからの変化量(ジセレカ200mg群及びジセレカ100mg群とプラセボ群との比較)
  • 投与1日目から52週時までのHAQ-DIスコアのベースラインからの変化量の推移(評価時点:投与1日目、投与2、4、8、12、14、16、20、24、26、30、36、44、52週時)
    †ACRの個々の項目として評価
  • 投与12、24、52週時のHAQ-DIスコア低下≧0.22達成率
  • 投与1日目から52週時までのACRの個々の項目(TJC68、SJC66、患者による疾患活動性の全般的評価、医師による疾患活動性の全般的評価、患者による疼痛評価、hs-CRP)のベースラインからの変化量の推移(評価時点:投与1日目、投与2、4、8、12、14、16、20、24、26、30、36、44、52週時)
  • 投与1日目から52週時までのSF-36(SF-36 PCS及びSF-36 MCS)及びFACIT-疲労スコアのベースラインからの変化量の推移(評価時点:投与1日目、投与4、12、24、36、52週時)
追加された評価項目※1
  • 投与24、52週時のErosionスコア及びJSNスコア※2のベースラインからの変化量
  • 投与24、52週時のmTSSのベースラインからの変化量の累積確率分布
  • 投与12、24週時のSDAI≦11.0達成率、CDAI≦10.0達成率
  • 投与24、52週時のSDAI≦3.3達成率、CDAI≦2.8達成率、Boolean基準による寛解達成率
  • ※1 承認申請過程においてPMDAの要請により追加し検討された。
    ※2 mTSSの構成要素
<安全性評価項目>
  • 有害事象(全投与期間及び投与24週時まで)
  • 特に注目すべき有害事象として、本剤の薬理作用を踏まえ、投与に関連する可能性のある次の有害事象を事前に規定し重点的に検討を行った。:主要心血管イベント、全ての感染症、重篤な感染症、帯状疱疹感染、活動性結核、日和見感染、B型又はC型肝炎ウイルス感染、深部静脈血栓症及び肺塞栓症、悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)、非黒色腫皮膚癌、消化管穿孔
  • 本剤の投与期間中、下記の臨床検査値を測定した。
    ヘモグロビン値、血小板数、リンパ球数、好中球数、ALT、AST、血清クレアチニン、クレアチンキナーゼ(測定時点:投与1日目、投与2、4、8、12、14、16、20、24、26、30、36、44、52週時)
    空腹時トリグリセリド、空腹時総コレステロール、空腹時HDLコレステロール、空腹時LDLコレステロール、LDL/HDL比(測定時点:投与1日目、投与12、24、52週時)
解析計画
  • 全ての患者が投与24週時の来院を完了又は試験を早期に中止した後、計画されていた投与24週時の有効性の結果及び試験完了日(2019年6月20日)までに得られた安全性の結果を評価した。
  • 有効性の解析は最大の解析対象集団(FAS)、安全性の解析は安全性解析対象集団で実施した。
  • 主要評価項目及び下表の副次評価項目は、日本用の統計解析計画書(JAPAN-SAP)に基づいた階層的検定を実施し、多重性を調整した。統計学的有意性(両側有意水準0.05)が認められた場合にのみ、次の項目の仮説検定を開始した。帰無仮説が棄却されなかった場合は、正式な逐次検定を中止した。非劣性の判定は、Liu JT, et al.2)に基づき、ジセレカ群の効果がアダリムマブ群の効果(投与12週時のDAS28(CRP)≦3.2の達成率)の50%を超える場合を非劣性とする治験相談資料を基に協議され、治験実施計画書にて規定した。
    2)Liu JT, et al. Int J Stat Med Res. 3: 11-20, 2014
  • 二値変数による有効性評価項目では、投与群及び層別因子をモデルに含めたロジスティック回帰分析を行い、p値及び正規近似に基づく95%信頼区間(CI)を示した。欠測データはノンレスポンダーとした[ノンレスポンダー補完(NRI)]。連続データによる有効性評価項目では、ベースライン値、層別因子、投与群、来院及び投与群と来院の交互作用を固定効果、患者をランダム効果とする反復測定データの混合効果モデル(MMRM)を用い、ベースラインからの平均変化量に関する差の最小二乗平均及び95%CIを示した。欠測データはMMRMを用いて処理した。
  • 日本人集団における有効性及び安全性について、全体集団と同様にサブグループ解析を実施した。

■MTXで効果不十分なRA患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験:試験デザイン