■JAK-STAT経路の活性が正常な免疫機能に不可欠1

基本的な免疫機能は、JAK-STAT経路の動的な平衡状態の影響を受けます1
JAK-STAT経路のシグナル伝達が不十分だと生理機能の働きが低下し、過剰だと炎症が生じます2-7

JAK-STAT経路のシグナル伝達の重要性

サイトカインの過剰なシグナル伝達
サイトカインの過剰なシグナル伝達
UCでは、JAKの特定の組み合わせによるサイトカインの異常かつ過剰なシグナル伝達によって、無症状または急性の粘膜炎症が生じます。状態が改善されないと、制御を失った免疫系が活性化して慢性的腸炎を発症します7
サイトカインの不十分なシグナル伝達
サイトカインの不十分なシグナル伝達
JAKの特定の組み合わせによるサイトカインのシグナル伝達が不十分だと、基本的な生理機能と免疫機能の働きが低下する可能性があります 2-6,8

JAK-STAT経路とその基本的機能における役割を理解することが、UCなどの炎症性疾患に関する研究の進展につながると考えられます3,8

UCの炎症に関わる複数の経路

  • サイトカインが誘導する複数の炎症経路が、炎症性腸疾患の発症に関わっています9
  • 複数のサイトカインを同時に標的とすることが、この疾患の管理に有効な方法であることが分かっています9
  • UCに関係する炎症性サイトカインの多くは、JAK1を含む組み合わせでシグナルを伝達します6,10
  • UCの発症に関係しているIL-33などのサイトカインが、JAK1を含む組み合わせで直接シグナルを伝達することはありません。しかし、IL-4やIFNγなどのJAK1に依存するサイトカインの活性に直接関連しています11

複数のサイトカイン経路に関わるJAK6,12

複数のサイトカイン経路に関わるJAK

JAKファミリーの中でもJAK1を含む組み合わせは最も幅広いサイトカインと関連し、複数のシグナル伝達経路で機能し、多くのサイトカインの活性を調節することができます10 。

ここに示したJAK1関連のサイトカインは、すべてを網羅するものではありません。 IFN:インターフェロン、IL:インターロイキン、LIF:白血病阻止因子、OSM:オンコスタチンM

JAK-STAT経路の調節

JAK-STAT経路の調節_JAK1
JAK1は複数のシグナル伝達経路に関わっており、UCに関わる多くのサイトカインに影響を及ぼしていると考えられます10
JAK-STAT経路の調節_JAK3
JAK3は主に造血細胞内に発現し、免疫系の細胞の発生に主要な役割を果たしています13
JAK-STAT経路の調節_JAK2
JAK2が発現するのは、正常な血球の産生に重要な働きをする細胞にほぼ限られています。血液に問題が生じないよう、その活性を維持する必要があります8,12

JAK-STAT活性を調節することで、炎症プロセスに幅広い効果が得られる可能性がありますが、恒常性維持に関わる非炎症性の経路を維持し、合併症を防ぐことが重要です10,13

JAK-STAT経路のJAK1を含む組み合わせを選択的に調節することで、経路の正常な機能を損なわずに、UCの炎症を抑えられる可能性があります6

UCに伴う炎症に関しては、選択性に着目することが重要です14

References:

  1. Villarino AV, Kanno Y, Ferdinand JR, O’Shea JJ. J Immunol. 2015;194(1):21-27.
  2. Wang KS, Zom E, Ritz J. Blood. 2001;97(12):3860-3866.
  3. Coskun M, Salem M, Pedersen J, Nielsen OH. Pharmacol Res. 2013;76:1-8.
  4. Bottos A, Gotthardt D, Gill JW, et al. Nat Commun. 2016;7:12258.
  5. Gotthardt D, Sexl V. Front Immunol. 2017;7:694.
  6. Schwartz DM, Kanno Y, Villarino A, Ward M, Gadina M, O’Shea JJ. Nat Rev Drug Discov. 2017;16(12):843-862.
  7. Neurath MF. Nat Rev Immunol. 2014;14(5):329-342.
  8. O’Shea JJ, Schwartz DM, Villarino AV, Gadina M, McInnes IB, Laurence A. Annu Rev Med. 2015;66:311-328.
    利益相反:著者にGalapagos社、Gilead社より謝礼金又はコンサルタント料を受領している者が含まれます。
  9. Danese S, Argollo M, Le Berre C, Peyrin-Biroulet L. Gut. 2019;68(10):1893-1899.
  10. Virtanen AT, Haikarainen T, Raivola J, Silvennoinen O. BioDrugs. 2019;33(1):15-32.
  11. Pinto SM, Subbannayya Y, Rex DAB, et al. J Cell Commun Signal. 2018;12(3):615-624.
  12. Salas A, Hernandez-Rocha C, Duijvestein M, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2020;17(6):323-337.
    利益相反:著者にGalapagos社、Gilead社より謝礼金又はコンサルタント料を受領している者が含まれます。
  13. Flamant M, Rigaill J, Paul S, Roblin X. Drugs. 2017;77(10):1057-1068.
  14. Fernández-Clotet A, Castro-Poceiro J, Panés J. Curr Pharm Des. 2019;25(1):32-40.